曲論直論

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ふるさと納税に反対の練馬区長 都市も地方も、国の掌の上で踊らされていることに気づけ

ふるさと納税で明暗分かれる都市部と地方部 本当に得をしたのは誰?

ふるさと納税廃止すべしと息巻く練馬区長のポジショントーク

やや古い記事かつ有料の記事で、ご覧いただいている方には申し訳ないが、9月27日の日経新聞に掲載された、練馬区長・前川燿男さんの記事が、ポジショントーク満載でひどいのでご紹介したい。

ふるさと納税 廃止すべき」と銘打たれた当該記事は、日経が出しているまちづくり系の隔週発行誌である「日経グローカル」からの紹介記事だ。「日経グローカル」は、いつもしっかりまとまった内容でよい雑誌なのだが、ニッチかつ予約購読しかしていないので、一般の方の目に触れないのが残念。

話を戻すとして、この記事でインタビューに答えた前川燿男練馬区長は、ふるさと納税制度による練馬区の減収が、23年度で50億円弱だったことを示したうえで、次のように述べた。

「制度自体が憲法違反だと思う。地方自治の本旨に反するふざけた制度だ」(ふるさと納税 廃止すべき 日経新聞 9/27)

地方自治の本旨」とは、憲法92条に書かれているもので、長い引用をすると、

憲法の「地方自治の本旨」は、住民自治と団体自治の二つの要素からなり、住民自治とは、地方自治が住民の意思に基づいて行われるという民主主義的要素であり、団体自治とは、地方自治が国から独立した団体にゆだねられ、団体自らの意思と責任の下でなされるという自由主義的・地方分権的要素であると言われている。」(第3部_[地方自治]1.地方自治の本旨、国と地方の役割 参議院憲法調査会HP)

というもの。前川区長はその直後に、「自分たちの負担でやるというのが地方自治の原則」(同 日経新聞 9/27)と言っているので、おそらく、税を他の自治体に持っていかれることが非民主主義的で、団体(練馬区)の意思とも合っていないので、「地方自治の本旨」に反すると言っているのだろう。やや苦しい憲法解釈だが、ここはまだいい。問題はこの後だ。

自分がよければそれでいい 支離滅裂な主張の練馬区

「少なくとも出身県への寄付に限ったり、控除の上限額を見直したりすべきだ。『偏在是正』に正面から取り組むのであれば別に制度をつくる必要がある。」(同 日経新聞 9/27)

ご高説はごもっともだが、地方の財源不足は、今から50年ほど前の昭和51年から存在しており、税源の偏在性は、今の国・地方が形作られた戦後直後から存在する。半世紀も解決していない問題を、どう国に訴え、どう解決するのか。

また、東京は企業が集積しており税収が多い、と地方から指摘されている点について聞かれた前川区長は、

ふるさと納税という形をとるのは間違いだ。現実に日本は人口が減ってきて地方自治は成り立たなくなってきている。だが、それを東京一極集中のせいだと言われると困る。」(同 日経新聞 9/27)

困っているのは、「地方自治は成り立たなくなってきている」地方の側だ。まるで、飼い犬が人に怪我をさせたからといって、飼い主が悪いと言われても困る、と言っているかのようだ。区長の態度はとても他人事で、自分がよければそれでいいという風にも聞こえる。

さらに、自分が地方の首長だったらどうするか、記者に問われると、

「制度の力を借りず、自分たちの力でなんとかできるように頑張るしかない。」

ふるさと納税のような方法で自分たちの状況を改善しようとするのはおかしいと思う。」(いずれも 同 日経新聞 9/27)

前川区長は、ふるさと納税が親の仇なのだろうか。「地方自治は成り立たなくなってきている」のに、「自分たちの力でなんとかできるように頑張るしかない」なんて、何をどう頑張れと言っているのか。支離滅裂であり、旧日本軍の悪しき敢闘精神のようだ。前川区長のような方が、東京にいて、戦地の有能な指揮官に補給も送らず指示ばかりしていたから、日本は負けたのだろう。

加熱する「都市」対「地方」の構図

ここまで、前川区長を批判してきたが、実は、彼だけではない。近年、「都市」対「地方」の構図はどんどん浮き彫りになってきている。

「まだやるの、という感じ。東京とそれ以外で福祉の格差がどんどん開く」(都の保育料無償化「まだやるの」 千葉知事、格差を懸念 Yahoo!ニュース 7/9)

東京都の小池知事が新たに打ち出した子育て施策に、おとなり千葉県の熊谷知事が嚙みついている。

「『東京一極集中』の是非をめぐり、東京都と地方の間で溝が深まっている。1~2日に福井市で開催した2024年の全国知事会議で、東京都の小池百合子知事は人口問題に関する緊急宣言案に反発し、他の知事と応酬を繰り広げた。」(「東京一極集中」深まる溝 全国知事会、都と地方論争 日経新聞 8/7)

同じく小池知事だが、全国知事会でも「東京一極集中」の言葉に反発し、他の知事から総スカンを食らった。人口減少の一因として「東京一極集中」があると言われることに抵抗があるようだ。

先述の前川区長も、小池知事も、その発言内容はいずれも東京を擁護するもので、有権者へのアピールにはなるのだろう。一方で、地方側もそれは同じなので、譲れない。こうして「都市」対「地方」の構図がどんどん広がっていく。これでいいのだろうか。

本当に対峙すべきは国 自治体は「都市」も「地方」も団結して国に当たるべきだ

「都市」対「地方」の構図は、どちらが勝っても意味はないだろう。「都市」も「地方」も、我が国にはかかせない存在だ。むしろ、この構図をただ一人、喜んでいるのは、ほかでもない、国だ。

ふるさと納税は、自治体対自治体の戦国時代の様相を呈している。互いに争ってくれれば、国への責任追及の視線をそらすことができる。しかし、本来、税の偏在や地方の財源不足を解消するのは、国の責任だ。人口減少対策も、東京一極集中の是正も、同じく国が責任をもって進めるべきことだ。

名誉回復のため、前川区長の発言を引くと、

「正々堂々と議論をして、国庫負担金と補助金の制度を変えることを検討すべきだ」(同 日経新聞 9/27)

と主張している。区長の言う通り、国と地方自治体でしっかりと議論をして、健全な地方財政制度をつくるべきなのだ。

だが、ここまでわかっているのに、前川区長も小池知事も、そして地方の知事たちも、目先の税収や選挙対策に目がくらんでか、みなポジショントークばかりして喧嘩している。それを国は横目で傍観するのみだ。「都市」も「地方」も国の掌の上で踊らされている。なぜそれに気づかないのか。両者とも冷静になるべきだ。

勘違いしてはならないのは、自治体の首長は、自治体の事だけ考えればいいわけではない。地方自治という、「国家」の重責を担っているのだ。ポジショントークばかりしていないで、全国の自治体は、一致団結して、国の責任を追及すべきだ。